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注文をどうしようか悩んでいると、彼女一押しの飲み物があるらしいので、それを貰う事にした。
彼女は微笑んで、カウンター越しに見えるコンロの前に立った。今から僕の為に飲み物を作ってくれるようだ。湯煎用のポットを持った瞬間、笑顔だった彼女がとても真剣な表情になった。あまりのギャップに思わず驚き、彼女に釘付けになった。――綺麗だ。
「お待たせしました」
出来上がったのは、ホットのミルクティーだった。夏の暑い時ではあるが、店内は涼しく冷房が効いている。おまけに雨に濡れたせいで、体は冷えていたので、彼女の選択に感謝した。
「美味い!」
ホットミルクティーを一口飲んだ瞬間、思わず口から飛び出た言葉だ。僕が今まで飲んできたどの紅茶よりも、遥かに美味かった。
僕の言葉を聞いて、彼女は満足そうな笑顔を湛えた。さっきの真剣な表情も良かったが、笑うととても素敵な彼女に、僕はドキドキした。
「ご満足いただけて、何よりです」
「これ、ミルクティーですよね? 何が入っているんですか?」
興奮して、僕は彼女に話しかけた。「こんな美味しい紅茶、僕、初めてです!」
「それは光栄です。これは、普通のミルクティーではなく、ロイヤルミルクティーと言います。紅茶を煮出して作るんです。それから、企業秘密のスパイスも入っています」
悪戯っ子のような可愛い顔をして、彼女が言った。僕が驚き興奮していることが、彼女としても嬉しいようだ。
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