65人が本棚に入れています
本棚に追加
「なるほどな。この公式を当てはめるのか。どの公式使うのかが分かんなくてよ、片っ端から当てはめてたら十分も使っちまったよ」
「時間の無駄だよ。授業でも習ったはずだ。 当てはめるべき公式はその都度決まってる。どういう時にどういう公式を使うのか、それを覚える方が効率が良いよ」
「なるへそ」
「あと言葉遣いね。滑り止めは面接だってあるんだから」
本命の大学の前には滑り止めとして受験する大学の面接試験がある。僕や夢野さんもそれは同じで、健吾と同じ私立大学を志望している。
「いっそ雫と夢野先輩が受験失敗したら、俺は楽しい大学生活を送れるんだけどな」
「それ健吾も本命は失敗する前提じゃないか。馬鹿なの?」
落ちるという言葉は互いに避けている辺り、僕らは立派な受験生だろう。僕と夢野さんに至っては合格判定がAであり、担任の能美先生も、他の誰も危惧してはいない。
国公立の大学にA判定はうちの高校で夢野さんと──彼女は卒業生だけど──僕の二人だけらしく、鼻が高い。
「それはそうと、ちょっと飯付き合えよ。たまにはさ。お前最近夢野先輩にかまってばっかりだろ? 一年くらい前と同じで、疎遠になりそうで嫌なんだよ。なっ?」
「別にいいけど。ちょうど夕飯どうしようかと思ってた時だし、夢野さんも……」
最初のコメントを投稿しよう!