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今日は彼女の通院日で、会えない事は分かっていた。
「そうと決まれば善は急げだ。雫の家にしようぜ! ピザでも買ってよ」
「な、なんで僕の家なんだよ!? 外食でいいでしょ?」
「いーや。お前んち行った事ないし、家の方が雫に勉強教わりながら飯食えるしよ。お前一人暮らしって言ってただろ? 気兼ねなくできるしな」
健吾はやや強引に行き先を決めると、開いていた参考書を全て閉じ、鞄を背負った。
僕も慌てて席を立ち、友人の強引さに巻き込まれながら後を続いた。有無を言わせぬ強情さも、健吾の褒めるべき性格として理解していた。
夕食を買い込み自宅に戻ると、今朝方冷え込んだせいで炬燵の電源を消し忘れていた事に気づく。健吾は有難いとすぐにその中に潜り込んだが、僕としては無駄な出費が増えた事へのショックを隠し切れなかった。
「お前、いい家に住んでんだな。親はそんなに金持ちなのか? それともママでも居んのか?」
「ママってなに?」
「そりゃお前みたいなイケメンはマダムに飼われててもおかしくないだろ? お前に出資してくれてるやつでも居んのかと思ってさ。あ、ピザ食おうぜ!」
その強引なペースに巻き込まれながらも、冷え切った体は炬燵の暖を欲し、足先をそっと忍ばせる。徐々に芯から体が温まり、チーズの旨味が味覚に幸せを運んできた。
「夢野先輩も連れ込んだのか?」
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