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大きめのピザを頬張りながら健吾は横目でじっと僕を睨んでいた。その視線に悪寒が走り、僕も慌てて二切れ目を口に運ぶ。蒸せてしまった。
「お前は夢野瞳が好きなんだよ」
今一度健吾が意味の分からない虚言を並べ、ピザを頬張る。飲み込んだあたりから表情が崩れ、ニヤニヤと粘り強い視線が僕に向けられた。
「んだよ、自覚なかったのかよ。お前がイケメンなのに学校の女子から告られないのは、夢野先輩には叶わないって他の女子達が思ってるからだぞ? げんに俺は雫に想いを馳せる女子の相談に乗り続けてきた。まあ食いはできなかったけどな」
「それ食ってたら最悪だよ。食べるのはピザだけにしなよ」
冷静なツッコミに健吾は吹き出し、親指を立てる。褒められても全く嬉しくない。
心臓の鼓動がやけに早い。
いつもの何倍速だろう。
これ程早い動悸を、僕は自覚した記憶がない。
……いや、実際は何度かあるのかもしれない。
───夢野さんと、居る時は。
そう思うと同時に、彼女の顔が脳裏に浮かび上がる。あの燦々と輝く向日葵を咲かせる事を僕は望んだ。それが枯れる事だけは望まないと決めた。
「ドントシンク、ジャストフィールイット」
「数学の参考書見ながら拙い発音で言うな」
「雫、きっと夢野先輩も待ってんだよ。前にも言っただろ? お前が食わねえと、他の奴に食われるぞってな。夢野先輩美人だし、ナイスバディおうイェエ!!」
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