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健吾の破天荒は無視し、僕は夢野さんの事を考えた。
彼女はいつも僕を校門付近で待っていた。
この数か月、ずっと僕の姿を待っていてくれた。でも、どうしてなのかは考えないようにしていた。考えれば考える程、彼女が僕の監視対象者であるという事実が浮き彫りになるから。
彼女の寿命を知っているから、だから気持ちを抑え込んだ。
感情移入。
同情。
それを人間に対して抱けば、神である自分がどんな無残な最期を迎えるか忠告を受けておきながら、僕は次第に彼女と過ごす日々の中に喜びが生まれている事に気づいていた。
彼女の咲かせる向日葵を見る度に、窓の外に颯爽と立つ彼女の姿を見つける度に。
日が経つにつれ、彼女の頭上を見る事を避けるようになっていた。もう数か月その数字を見てはいない。僕はいつも彼女の笑みを見ようと、彼女の顔だけを見つめるようになった。
僕は、彼女に、惹かれていた。
彼女に会う度に、彼女が頬を染める度に、僕の鼓動は早くなった。
「胸に手を当てて訊いてみろ。お前は、夢野先輩が好きなんだ。ずっと、前からな」
健吾が茶化す事なく言い、微笑んだ。
僕はそっと自分の薄い胸に掌を押し当てる。
問いただす。
答えは、すぐに帰って来た。
───好き、なのか。
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