【僕と俺と彼女】

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 以前読んだ本に書いてあった。  恋に落ちるキッカケは人それぞれだと。  僕はそれを読んで、人ではない僕はその一文に当てはまらないと思った。だから神が恋に落ちる瞬間を、僕は知らない。  しかし、キッカケなんてものは初めから存在しないのかもしれない。  無意識に、監視対象者として目で追いかけている間に、彼女のいろんな表情を見て、欲が湧いた。  僕にしか見せない表情があると知り、僕の前でだけ饒舌な彼女を知った。  僕が居れば彼女は笑える、向日葵を咲かせられると思った。  小さな火種が合わさって、今僕の胸の中で大きな炎となっている。だから、胸がざわつき、鼓動が早くなる。  それはすべて、僕が─── 「……好きだから、なんだ」  腑に落ちなかった事がすっきりと解消された。  僕は、夢野瞳に恋をしている。人間である彼女に、神である僕は恋に落ちた。  それをこの瞬間理解した途端、僕は、暗闇へと落とされた。  ───僕の好きな人は、二年後、死んでしまう。  気が狂いそうになった。  しかし健吾が居るから、僕はなんとかその暗闇から這い出ようと息をした。彼女が大切な人になった瞬間、僕はその事実を重く受け止めた。
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