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この年日本列島に押し寄せた寒波は数十年ぶりにも及ぶ記録的なもので、交通機関の遅延や運休が相次いでいた。
大学受験二次試験前日。
一月中旬に行われたセンター試験を僕と夢野さんは難なく突破しており、失礼ながら滑り止めとして私立大学の入試も既に済ませていた僕らは、本命とされる国立大学二次試験を控えている状況だった。だったのだが、今はそれよりも心身共に不安要素が一つだけ存在する。
チラリと遠慮気味に彼女の姿を覗くと、ふいに目が合ってしまった。
以前僕の自宅に訪れた際とは違い、今の彼女は自身が持ち寄せた寝間着を身に纏い、既に濡らした髪をヘアゴムで一つに纏めている。
風呂上がりの彼女は肌を赤らめ、艶めかしく見えてしまうから困ったものだ。本当に。
「そろそろ寝ないといけないよね」
「うん。明日寝坊したら元も子もないもん。それに明日はきっと雪が積もってるから、電車にも遅延が発生してるかも……最悪タクシーを使わなきゃ」
「仮に積雪の影響で交通機関が機能停止したら、大学側もそれなりの措置を取ってくれるのかな? 受験日変更とか、時間をずらすとか」
「その可能性もあると思う。でも、間に合っておくに越した事はないよ? だからほら、そろそろ寝よ?」
「う、うん。ね、寝ようか」
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