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「神様だからって風邪を引かないとは限らないよ? 神様の世界に居た頃に風邪を引いた経験は?」
「……ある、かも」
「ほら。もうっ、じゃあそんな暖の取れないもので眠っちゃだめ」
「でも、他に布団は……」
部屋の窓を外部で吹き荒れた強風が叩き、その音を聞くだけで肌寒さが増していく。僕と彼女は瞳を合わせる事もなく、ただ無言でその場に正座した。
夢野さんは一度大きく息を吸い込むと、それをゆっくりと吐き出した。
彼女の胸が大きく膨れ、視界の端に映るたびに感情が高ぶっていく。
「布団離してって言ったのに、その布団自体がないんだもん……」
以前の台詞を思い返したのか、彼女は仕方なしといった具合で敷布団の端に寄っていく。それが何を意味するのか、馬鹿ではない僕にも理解できた。
「い、いいの……?」
「仕方ないもん。それに、お邪魔させてもらってるのは私の方。本当なら私が寝袋で寝ないといけないのに」
「それはだめだ!!」
自分で自分の声量に一驚し、目を丸くした彼女を見る。
彼女は病を患っている。
彼女は女の子。
彼女は僕の、好きな人。
いろいろな理由が脳内を駆け巡り、同時に、躊躇なく彼女の隣に寝転んだ。
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