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「お……俺は、夢野さんと同じ大学に行きたいんだ。だから、これでいいんだよ」
「お、音見くんどうしたの? 自分の事、俺なんて言って……」
そこに寝転ぶと、いつも寝ている布団が自分のものではない気がした。
首を倒すとすぐ隣に彼女の綺麗な顔があり、大きな瞳が僕をじっと見つめている。艶のある唇が、僕の動悸を速める。
───人間に恋するなんて、僕はやっぱり、落ちこぼれなのかな。
今は、もう自分が落ちこぼれであることに悲しみも憂いも存在しなかった。この世界に落とされなければ僕は夢野さんと出会う事は無く、こうして至近距離からその美しい顔を拝む事もなかった。
僕ができる事は、落ちこぼれ神として彼女の最後を看取る事くらい。
「健吾に言われたんだ。雫は俺っていう方が似合うって。変、かな?」
「変じゃないけど、変な感じ」
「それ変って事じゃない?」
「うん、変かも」
向日葵が咲いた。
その向日葵をこんなにも間近で拝める事に、僕は確かな喜びを感じた。自身の恋心を自覚してから初めて咲いた向日葵は、十分咲きなんて軽々しく超えて輝いていた。
この時の僕が一体全体どんな表情をしていたのかは、彼女しか知らない。僕の顔を見た彼女は向日葵の花弁を丸め、そっと僕の胸に顔を寄せた。
夢野さんも僕と同じ気持ちで居てくれるのなら、僕は、僕は。
「……少し、不安なの」
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