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「受験? 大丈夫だよ、夢野さんは偉いんだから。もしかして本番には弱いタイプ?」
「ううん、本番にも強いタイプ。むしろ、強すぎるタイプ」
「なんだそれ。でも卒業式のときみたいに、あがらないといいね」
今度は僕が向日葵を咲かせているだろうか。
彼女が僕の笑みを見て、もう一度強く僕の胸に顔を寄せる。
僕からも彼女と同じように向日葵の香りがするのだとしたら、僕らが出会う事は運命だったと言いたくなる。
「何が成功で何が失敗かは、きっとその心次第。私はもう失敗しない」
ぐすっと鼻をすする音。
彼女の涙を見るのはあの日以来。その涙の理由を知りたくて、僕は彼女を監視する事に決めた。
一年が経過した今でもまだ、僕は彼女が何故あの日泣いていたのかを知らない。寿命を知ったから、そう想像はしているが、それが真実なのかは分からない。
いつか彼女の方から口にしてくれる。
そんな安易な事を考えている僕は、落ちこぼれである事は認めても、人間と同等な立場にある事は決して認めようとしない、滑稽な生き物だ。
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