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瞼を持ち上げると、いつの間にか窓の外から薄らとした灯りが差し込んでいた。
普段の三分の一程の光の薄さに違和感を覚え、そっと腕を動かしてみる。
と、何かに触れた。
肌寒さを感じるものの、手の甲だけはとても暖かかった。
彼女は瞼を閉じ、スースーと規則正しい寝息を立てていた。
頬の筋肉が少しだけ上がり、とても幸せな夢を見ているのだろうと想像してしまう。名残惜しさを感じつつ布団から這い出し、窓を少しだけ開けてみる。
体が凍り付いてしまうと錯覚するほどの冷気が入り込み、視界を真っ白な世界が覆った。昨晩振り続けた雪は何層にもなり、一面が銀世界と化していた。
僕は慌てて携帯で時刻をチェックし、予定時間まで余裕がある事を確認。彼女に布団をかけると、慌てて受験予定の大学に電話を入れる。
しかし繋がらず、おそらく同じ旨を確認しようとした受験生で回線が上手く接続されていないのだろう。潜み足で移動し、テレビのスイッチを入れる。ボリュームを最小限にし、情報をチェック。
受験生に配慮し、県内の受験会場へのアクセス、及び遅延情報が随時画面内に差し込まれていた。
僕は次々に更新されるそれを目で追いかけ、受験予定の大学の名前がない事を確認した。
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