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比較的積雪の少ない場所に建っている影響からか、僕と夢野さんが受験予定の大学は予定通りの時刻で入試をスタートさせるらしい。
「夢野さん、起きて。雪、すごいよ」
彼女の体に触れて良いのか分からず、僕は声だけで彼女を起こそうとする。
起きなければ思い切って肩を揺さぶる予定だったのだが、彼女が瞼を持ち上げた。少し残念だった。
寝起きの彼女を見るのは新鮮で、完全に開ききっていない目が幼く見える。高校を卒業し、僕を迎えに来るときは少しだけ化粧をしている彼女に見慣れていたからか、素顔の彼女は幼さを残して見えた。
「入試の時間、予定通りだってさ。でもまだ時間に余裕はあるから、焦らずゆっくり準備しよう。……って、聞いてる?」
朝は弱いのか、瞼を手の甲でごしごしと擦りながら、彼女がぶるっと体を震わせる。
そしてゆっくりと立っている僕の足元に近寄ると、何の躊躇もなく僕の両足を抱きしめた。
「な、なにしてるの?!」
「……あっ」
睡眠状態から覚醒した夢野さんは状況を理解したのか、咄嗟に僕の足から離れ、周りを確認。首から真っ赤に肌色を変えながら立ち上がり、そしてこけた。
「だ、大丈夫!?」
「ご、ごめんね? 朝、弱いの……あ、あと、ごめんね? 寒くって、その……」
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