序章

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夢を見る 夢のなかで、愛しき御身をこの手に掻き抱く しかし、愛しき貴女は腕なかで無残にも崩れ落ち 我が身を引き裂かんばかりの慟哭 愛しき貴女と共に有れた甘美で、そして愛しき貴女を喪う残酷な夢 これは私の記憶では無い私の事では… しかし、確かに有った過去の記憶 久々の夢 「御休み処を失礼します 志那様…草薙が参りました」 障子の向こうから遠慮がちに声が掛かる 「直ぐに向かう」 眠っていたわけでは無いが久しぶりに見る夢に床より離れ難かっただけで… 呼び付けて置いて捨て置くのも不敬に当たるな…と思い頭を上げる 身支度を整え来客の元に向かいながらも… 夢想様に思い巡る 御身を望みながらも…喪う恐ろしさも知っている しかし、求めて止まない 見上げた空には、編隊を組む鉄の鳥達が… 「今日はどの街が焼かれるのやら…」 世は、昭和19年12月… 後の世で第二次世界対戦と呼ばれる戦の真っ只中だった
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