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気付くと辺りは静まりかえりまだ母の腕の中に
「お母さん空襲終わったの?」
母に語りかけるが返事は無く
「お母さん?」
母の顔を見ようともがくと母の両の腕はまるで脆い細工物の様に崩れ落ちた
「いやぁ、お母さん!!」
母と思っていた物は、少女が離れれば、脆く崩れ落ちた…
母の名を呼びながら瓦礫と化した町をさ迷う
日も傾き、疲労と空腹で動けなくなり瓦礫の山の隅に隠れる様に座り込む
「こちらにおいででしたか」
少女の前に差しだされた手と
「迎えに参りました器女様」
と言う声に少女が顔をあげると
長い黒髪を高い位置でポニーテールにした、藤色の大陸風の衣装の美しい顔をしているが少し神経質そうな男性と
緑の長い髪を後ろで長く結んだ、朱色の衣を纏った、人好きのする笑顔の初老男性が少女を覗き混んでいる
神経質そうな男性の差しだした手と男性の顔を見、睨まれてるようなその顔に顔を背けて…
「きめさま?
ごめんなさい…私そんな名前ではありません…ひとちがいでは…」と漸く絞り出す
「いえ、貴女は我等の器女様です」男は少女に膝まずき再び手を差し出すが…
声の優しさと裏腹に男は氷のように冷たく、触れば切れてしまうような緊張感に包まれた雰囲気に
少女は恐ろくなり益々固く肩を抱き見ようともしない
「お前みたいな仏頂面してちゃ怖がるに決まってる」
不意に体が空に浮く
「子供はこうやってあやしゃ良い
大丈夫怖い面構えだが怖くわねえって」腕の中に座らされ顔に着いた煤を拭かれながら少女に歳に似合わぬ屈託の無い笑顔を向ける
「枝弦貴様、器女に無礼な」
「お前みたいに怖がらせるよりもましだ、なぁお嬢ちゃん」
優しく人好きのする笑顔を向ける初老の男に少しだけ安心する
「あの…きめさまって?迎えにってどういうことですか?」
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