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それを皮切りに、彼女がさっきの話題に対してのコメントを遅れて発する。
「日が落ちれば落ちるほど冷えるんだから、ますます外に出る気がなくなるじゃん。早く帰るに越したことないよ」
「それな」
言うが早いか、彼女らは帰宅の準備を始めた。ブレザーの上から、キャメルのコートに袖を通す。
「そういえばね」
ぽつりと発した彼女の声ではあるが、放課後のひっそりとした教室にそれはこだました。
「うん?」
彼が、マフラーを巻きながら首をかしげる。
彼女もくるくるとマフラーを巻き始めた。
そして話す。
「イルミネーション、観に行きたい」
「それな」の返答はなかった。代わりにあったのは、
「僕、人混みが苦手だからさあ。だから帰り道に、信号機とか車のライトとか見ながら帰らない?中々綺麗だよ」だった。
彼女はコクリと頷き、彼の手を取る。
「相変わらず変な奴」
「それは君もだよ。なんせこんな提案を良しとしちゃうんだから」
「それな」
ストーブと電気を消し、彼女らは教室を後にした。スイッチを切ってからしばらくは音を立てていたストーブも、今では静かになった。そこにはすっかり静寂に包まれた教室があるだけであった。
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