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だがそこは猫型獣人。吹き飛ばされながらも体勢を整え、見事に着地。そのままダークエルフの男と共にデイルさんに襲いかかった。
先程の彼は確かに強かった。しかし獣人とダークエルフを同時に相手どるのは危険極まりない。
不安に押しつぶされそうな気持ちの中、『シュイン』という何かが擦れるような音がした。
あの音の主だろう。一気に加速したコーネリアスさんがデイルさんを庇うような形で割り込む。まるで双角種とは思えない動きだった。携えた戦斧が下から跳ね上げるように風を切り裂く。銀の軌道が二人を襲うも、後ろに大きく跳躍するような形で躱された。
「っは!!そんな大振りが当たるかよ!!」
ここからではよく見えないが、山猫型獣人がコーネリアスさんを挑発しているようだ。
「……それで、いい……欲しかったのは、距離」
その挑発をもろともせず、彼は斧から片腕を離し、二人に掌を向ける。何かが高速で放たれ二人に命中するとバシャリという水音と共に液体が飛沫をあげた。
「っぶ!!冷てぇな何すんだおい!!」
濡れるのを嫌っているのか、山猫型獣人が抗議の声をあげた。
「チッ……甘ったれどもが作った卑怯な薬か……お前だけは絶対に殺す」
ダークエルフの男の目に激しい憎悪が渦巻き、黒い靄のようなものが出現する。周囲の草が黒く変色し、森が苦痛を訴えた。その声を聞いていた私の頭に痛みが走る。
ずぶ濡れになった二人はそれぞれ腰を深く落とし、再び襲いかかる。
「クソが!!余計な体力使わせやがって!!」
「テメェらが密猟なんて企てるからだろ!!!」
デイルさんが二人の連携を妨害するように獣人を盾と正論で殴り飛ばし、ダークエルフの激しい連撃をコーネリアスさんが手の装具で受け止め続ける。しかし怒りを露わにしたダークエルフの攻撃は熾烈を極めた。火花が飛び散り、その勢いに圧されるように後退する。
「そうそう。迷子ちゃんと合流できたらぁ、一旦ギルドに送ってあげてくださいねー。では、アデュー・アンド・グッドラック!です!!」
シャルさんはそう言い残すと茂みを飛び越え、そのまま駆け出した。
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