嗚呼、忌まわしき先入観

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夜の帳に覆われる森の中、少女は一人膝を抱えてうずくまっていた。名はルーネ、種族はエルフ。 昼前の騒乱が嘘かのように、そこには静寂のみが広がっていた。 空を見上げると樹々の隙間から満天の星空が見える。 母はまだ元気でいてくれてるだろうか。生存を星に願うことしか出来ず唇を噛みしめる。 薬を手に入れる為に国を出たのは早朝で、それから二回夜と朝が来て、そして今また夜が来て。 思わぬ誤解の元凶となった髪を乱暴に握りしめる。 私は今までどこにでもいるような、何の変哲もないエルフだと思っていた。 実際に私の家族や友人、周りの大人も私を特別扱いしたり邪険に扱ったりしたりするわけでもなく、国に住まう普通のエルフとして共に生きてきた。
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