初陣

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シャルさんに気がついた獣人が彼女を飛び道具で攻撃するが、いともたやすく躱される。 「ハンッ、何かと思えばイエネコのお嬢ちゃんじゃねぇか。お花でも摘みに来たんでちゅかー?」 「ごきげんよーう。こんな事でしか小銭を稼げないうだつの上がらないヤマネコさーん。さっきからずーっおしゃべりですねー。数だけの邪な手とー、黒く汚れた手を取ったのがあなたの罪ですー!恥を知りましょー!!」 弾む声で獣人を糾弾する彼女の周囲にいくつもの小さな魔術式が展開された。そこから数えきれない程の金の光弾が乱れ打つような形で襲いかかる。若干デイルさんも被弾しているような……気のせいだろうか? 「おいシャル!シャル!!おい!!当たってる!!当たってる!!」 「シャル渾身の魔術について実況お願いしますー!!」 「……地味に痛え!!」 ……気のせいではなかった。被弾していた。 「まーまーデルデル。今のはじょーだんじょーだんー。本番はこっちー!!」 「お前……」 受難を冗談だと受け流されるデイルさんが不憫で仕方ない。シャルさんが杖を掲げ上げると、二つの光弾が姿を現わした。徐々に膨らみ人間の頭くらいの大きさになったそれは猫の形に変化する。 「どうせなら可愛い方がいいですよねー!!デルデルはわんちゃんだから伏せーー!!にゃんこはシャルと若干キャラかぶっちゃう可能性あるので、ここでアーメンドナドナバイバイですー!!」 「は!?なんだこのイエネコ女ふざけてんのか!!」 「ふざけてやがるし、見ての通りイカれてんだよ、流石に命までは取る気ねぇからお前も伏せろ!!」 「お、おう!」 この短時間でデイルさんと山猫型獣人との間に友情が芽生えていないだろうか? 「作戦変更!やっぱりデルデルごといきまーす!!」 「うわぁぁぁぁ!!!」 猫の形をしたつぶらな瞳の光弾は戦いの場に似つかわしくないようにふよふよと浮かんでいたが片方が獣人の男を見つけ、もう片方がダークエルフの男を見つけると目をひん剥き、牙を剥き出しにしてそれぞれ突っ込んだ。ダークエルフの男はなんとか回避し続けているが光弾は彼をしつこく追跡する。獣人とデイルさんを狙っていたた光弾は盛大に爆発した。可愛いってなんだろう。
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