初陣

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あぁ……森が……そしてシャルさんのGOサインはまだだろうか。 デイルさんの安否を茂みの隙間から伺うと、疲弊したような表情ではあるが、しっかりと立っていた。そしてその肩には完全に伸びてしまった獣人が。 「チッ、生きてやがりますね。まぁ衝撃波で気絶メインだとそうなりやがりますかー……チッ」 「……後はダークエルフか」 デイルさんは最早、何も言わなかった。獣人を折り重なる人間の山に放り投げると、再び武器を構える。 それとほぼ同時にダークエルフの男が苦虫を噛み潰したような表情で左手に持っていた双剣を猫爆弾に向けて投擲。脳天に当たる位置に双剣が刺さった爆弾は周囲に波のような物を広げるとそのまま消滅した。地面には砕け散った双剣が音を立てて散らばる。 しかし武器を片方失っても尚、男の目には殺意が渦巻いており、激しい連撃が三人を襲う。デイルさんやコーネリアスさんが攻撃を防ぐ。シャルさんは二人の間を行き来するような形で回避し続け、その合間に魔法を放って攻撃する。 「しつこい男は嫌われるんですよー?ってもう聞こえてなさそうですねー」 「コーさんそろそろ腕に限界が……」 コーネリアスさんの腕がバチバチと音を立て、稲光のような物を纏っている。それはまるで雷魔法を纏っているというよりは壊れてきているような…… 最早言葉は意味を成しているのかわからないが、ひたすらに「殺す」と口走る男の攻撃は次第に弱まっていく。体力が限界を迎えてきていることも要因の一つに数えられると思うのだが……先程、コーネリアスさんが放った水は恐らく睡眠作用のある植物の成分を抽出し、液体にした物。それが徐々に効いてきているのだと思う。 コーネリアスさんの反撃を受けた男の右腕がぐらついた瞬間を狙い、シャルさんが光弾を放つ。残ったもう片方の双剣は遠くへと跳ね飛ばされた。
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