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「ノブ、ちょっと待てよ」
バスケ部の飯星は足も速く豊田にすぐ追い付き、腕を掴んだ。
そして、豊田の体を引き寄せて抱き締めた。
「何すんだっ、篤司!離せよ」
豊田はもがくが、飯星はビクともしない。
「黙って聞いてくれないか。俺、ノブが好きだ」
もっと強く抱き締められる。
「何言って……」
「俺とお前は親友だ。でもそれ以上の感情があることに、俺もお前も気づいた」
「でも篤司、俺はこの気持ちを封印すると決めたんだ……って、え?篤司も気づいたって……」
豊田は抱き締められたまま、少し涙目になって言った。
「亡くなったお前の姉さんが夢か現実か分かんねぇけど出てきてさ、『信久のことよろしく』って言っていったんだ。それからノブのこと考えると胸が苦しくってさ。お前が俺たちのこと避けてるんじゃないかって思ったとき、すげえ悲しかった。でもお前、俺のこと見ててくれただろう?」
飯星は腕の力を緩め、豊田の顔を覗き込んだ。
豊田も飯星の胸に埋めていた顔を上げた。
「そうだよ。この気持ちに気付いて、おかしいと思ったから封印しようとしたけど、そんなこと出来なかったよ。篤司のことばっか目で追って、どうしようも無かったよ。好きで好きで仕方ないんだよ!」
豊田は飯星の胸をバンバンと叩く。
また飯星に抱きすくめられる。
「久堂とは別れてきた。これからも一緒に居てくれないか」
驚いた豊田だったが、こくんと頷いた。
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