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美術部部長の久堂博子が手をぱんぱんと叩き、部員全員にこちらを向くようにしてから話す。
「えぇ、皆さんに今度の高校美術展に出品してもらう作品を、今週いっぱいで締め切って提出してもらいたいと思いますので、早く仕上げに取りかかる様にお願いします」
豊田たちと同じ高校2年生の博子は、2学期になってから美術部部長を引き継ぎ、部員を引っ張っている。
17歳の割には落ち着いていて、男女問わず先輩後輩問わず好かれるタイプである。
博子は、私も取りかかろうっと、という風に美術道具を持って、豊田の所まで近づいて来た。
「豊田くん。あなたも体育館で部活動の風景を描いてたわよね。一緒に行きましょ」
豊田は断る理由もなかったので、道具をまとめて博子について行った。
体育館へと続く渡り廊下を歩いていく。
中庭へ目をやると、黄色く色づいた銀杏の葉っぱが風に吹かれてゆらゆらと揺れ、数枚散っていった。
バレーボール部とバスケットボール部の練習している声が聞こえてきた。
それと同時に女子たちのキャーキャー声も聞こえる。
「久堂」
「はいっ?」
先を歩く博子は、豊田に呼ばれて振り向いた。
「久堂はバスケ部のある奴を描いてるだろ?そいつのこと好きなのか?誰なんだよー」
横に並んだ豊田は、博子を肘でつつきながら聞いた。
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