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体育館の手前で博子は立ち止まり、顔はみるみるうちに赤くなり俯いた。
暫くずっと俯いていたので、豊田はしまった、と思い謝った。
「久堂、ゴメン。もしそうだったらさ、お前もキャーキャー言ってる女子たちみたいにアピールすりゃいいのに、と思ってさ。」
「私だってやってみたいけど、その前にそんなことできっこないし、それに私の好きな人はそんな子好きじゃなさそうだし……」
博子はやっと体育館へ入った。
そして練習しているバスケ部員の方へ目をやり、数秒間、一点を見つめた。
後から入ってきた豊田に振り向き「あの人……私の……好きな人」と指をさして小さい声で言った。
博子が指さした相手は、ウォームアップをしていた親友の飯星だった。
「篤司だったら俺の親友だし、久堂のことアピールしてやろうか?」
博子はびっくりしたように目を見開いて「そんなこと言われても……」と、もぞもぞ言い、自分の絵を描く場所へと走っていった。
今ではもうすっかりさっきのことは忘れているかのようにせっせと絵を仕上げていっている。
豊田は絵を描きながら、さっき博子に言った言葉を後悔していた。
━━アピールしてやろうか?━━
でも何故その言葉を言ったことに後悔しているのか、解明できないままその日を過ごした。
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