Classmate

6/13
前へ
/13ページ
次へ
 その頃、豊田は美術室の椅子に腰掛けて、考え事をしていた。  何故、昨日言った博子への言葉を後悔しているのか。そして、篤司が博子のことを気になっていると聞いて、自分は怒ってしまったのか。  考えれば考えるほど胸が痛くなってくる。  するとその時、女性の声が聞こえた。 『それはきっと恋よ』  豊田には聞き覚えのある声だ。後ろを振り向いて見渡した。  そして……ハッとした。 「ねえ……さん」  その女性は、3年前、20歳の時に病気で亡くなった豊田の姉だった。 「ねえさん、どうしてこんな所に……未練でも残して……」  あまりの驚きに、豊田は姉にいらぬことを聞いた。 『違うわよ。私はちゃんと3年前に成仏してます。それより信久、あなたは恋をしてるのよ』 「恋?誰にだよ」 『それは自分で考えなさい。私はそれだけを言いに来たの。頑張ってね。私はあの世でちゃんと見守ってるわ』 「ねえさん……」  言う間にスッと消えて、豊田は椅子から腰を上げて姉の方に駆け寄ったが、もう既に遅かった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加