19人が本棚に入れています
本棚に追加
部活が終わって、飯星は昼休み以来、豊田と話していないので心配になり、美術室に足を運んでみた。
美術室内は薄暗かったが、棚の向こうに人影が見えた。
「ノブー」
飯星はとっさに豊田の名前を読んだ。
すると棚の向こうから出てきたのは、久堂博子だった。
「あっ、ごめん。間違えた」
飯星は出てきた相手が豊田じゃなく、博子だったので驚いた。
博子も思いがけない人が美術室に来たので、少し戸惑った。
「あっ、豊田くんなら15分くらい前に帰ったけど、一緒に帰る約束してた……とか?」
数秒間沈黙していたが、博子が恐る恐る口を開いた。
「いや、ノブのやつ、何か昼休みから俺のこと怒ってるみたいで、全然話してないんだ。心配になってココに見に来たんだけど……。あぁ、そう言えばノブ、君に俺のこと何か言ってた?」
博子は飯星に問われて、少し俯いて顔を横に振った。
「そっか……昼休みに、ノブと話してたんだけど、あっまだ怒る前ね。君のことの話になって、その……君が俺のこと好きだって聞いて……実は俺も君のこと気になってたんだけど……名前ぐらいしか知らなくて……」
「豊田くん、やっぱり話しちゃったんだ。恥ずかしいよ」
博子は俯いていた顔を上げて、頬を赤くしながら言った。
二人は照れながらも、それから一緒に帰った。
最初のコメントを投稿しよう!