あの路地を曲がって。

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あの路地を曲がった所には時代から取り残されたような古本屋がある。 もうあまり見かけなくなった木造で平屋のまさに昭和を彷彿とするレトロな建物。 僕は週に2回ぐらいこの古本屋へと通う。 官陀特有の曲がりくねった登り坂を抜けて、猫が塀の上で欠伸している角を曲がって、退屈そうに店番をしているお婆さんの横を通り抜けて。蛇のように細く長い道を抜けた路地を曲がった先にその店はある。 名前なんてない。 宣伝する必要のない場所なのだから、知る人だけが知っていればイイ。そういう意識がさらにこの場所を特別にさせていて、常連である僕は思わず頬が緩む。 立て付けの悪いガラスの扉をくぐると2人居た先客達が僕をチラッと見るがまた手元の本に戻る。 金髪に眼鏡、さらにピアスをしたガラの悪いヤンキーみたいな店員ですら僕を見て「いらっしゃい。」と一言声をかけると目線を下に戻す。そこには広げられた本が。 広さは外観からは想像出来ない程広い。 10棹は連なっている本棚が壁のように通路を作り、それが4列は作られている。
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