青い海、夏の嘘

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 *  白く強い光が、瞼の裏側まで突き刺さる。遠くのほうから、波の音がかすかに聞こえてくる。薄っすらと目を開くと、壁に掛けられた自分の服が視界に入った。 「トオル?」  ベッドの脇から、不安そうな声音が聞こえてきた。身体を起こそうと身じろぐと、腰のあたりが鈍く痛むのを感じる。 「……大丈夫?」  懐かしい音に一瞬驚き、声の持ち主と視線を合わせる。 「日本語……」  ユージンは透に向かって寂しげに微笑む。 「憶えていないかな、僕のこと」  そう言ってベッドへ腰掛け、透の髪に触れながら続ける。 「砂浜に座る君を見つけて、奇跡だと思ったよ。まさか僕を探しにきてくれたのかと思った」  髪の一本一本を慈しむように指先でそっと持ち上げる。 「でも君はいつまで経っても動かないし、僕の顔を見ても何も言わなかった」 「……」 「僕たちは子供の頃に会っているんだ……日本で」  手の温もりが、一瞬で離れていく。 「父の仕事で一年間、日本にいたんだ。帰国する一ヶ月前に、学校の帰りに空き地でボールを蹴っているトオルと出会った。トオルは僕を誘って、一緒にボールを追いかけて……」  掌をじっと見つめながら、呟くように続ける。 「短い時間だったけれど、僕にとっては忘れられない思い出だった。君のことを、ずっと――」 「気づいていたよ」  伏せられていた瞳が、透へと向けられる。アクアグリーンの色が鮮やかに変化する。 「途中から、だけど……君はもっと小さくて、髪も長くて……色だってもっと明るい金色だった。それに」 「それに?」 「ジーン、君はそう言っていた。あの時君は日本語を話せなかった」  今度こそはっきりと、ユージンは顔を綻ばせた。 「そうだ、ジーンは僕のニックネーム。髪の色はだんだんと変わってしまった。ユージンと言ったのは、君が僕をまったく思い出す様子がなかったから、それで、その……」 「腹が立った?」 「うん、まあ、そういうこと」  ユージンは照れ臭そうに頬をかく。
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