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「トオル」
突然現れたその姿に、声も出ないほど驚く。
必ず会いに行く、待っていてと言われても、その言葉をどこまで信じて良いのかわからなかった。もしかしたら二度と会うことも叶わないかと、心を引き裂かれる思いで別れを告げたのは、わずか一週間前のことだ。
「どうして……?」
透の反応はユージンを充分に満足させたらしい。楽しげに笑う姿を、透は呆然と見つめる。
「一年前から、日本で仕事をしていたんだ。言っただろう?君に会うために勉強したって」
動くことができないでいる透の手を取り、甲に軽く口づける。
「ずいぶん遠回りしたけど、君に会いに来た」
明るい陽射しの下で、彼の瞳がきらきらと輝く。
「さあ、行こう!」
透の手を引き、ユージンは軽やかに歩き出す。
夏は、まだ始まったばかりだ。
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