青い海、夏の嘘

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 期待を込めた目で、透を見つめる。それは彼の名前のようだ。「ユージン」と繰り返すと、満足そうに頷く。自分も同じように指差しながら名乗ると、ユージンはその音を確かめるように、ゆっくりと発音した。 「トオル」  透き通った瞳でまっすぐに見つめられて、名前を呼ばれる。その響きに、心臓がとくりと音を立てる。ユージンは鞄から緑色の瓶を取り出し、透へ一本差し出した。瓶は暑さのせいでびっしりと水滴に覆われていて、掌からひんやりとした冷たさが伝わってくる。ユージンは蓋を開け、透に向かって瓶を軽く持ち上げた。視線で、どうぞ飲んでと促される。 「ありがとう」  自分では気がつかないうちに、身体はすっかり干からびていたようだ。ごくごくと音を鳴らしながら流し込めば、喉元でぱちぱちと泡がはじけ、口の中で爽やかな苦味が広がる。ひと心地ついて隣を見遣ると、ユージンはまた、穏やかな表情で透を見ていた。彼も瓶に口をつけ、一口二口と飲んでいく。そのリズムに合わせて白い喉が上下に大きく動き、透はそこから目が離せなくなる。  視線に気づいたユージンが、小さく首をかしげる。慌てて視線を逸らすと、横からくすりと笑う気配を感じて、透は余計に恥ずかしくなった。そのまま海を眺め、波の音を聴く。
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