花いちりん

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もうすぐ夏休みと言うある日、高校生の 名瀬(なせ) 敬一(けいいち) は公園のベンチで一人、()(ひし)がれていた。 本来(ほんらい)なら、期末(きまつ)テスト()けの休日(きゅうじつ)だったこの日、生徒会の仕事で登校している片想(かたおも)いの彼女に告白(こくはく)するべく、わざわざ制服に着替(きが)えて学校に出向(でむ)いた彼だったのだが、 「夏休みまでに、()()でも人生(はつ)の恋人をゲットしたい!!」 と言う、彼の野望(やぼう)は、 「ごめんなさい!!」 と言う、彼女のお(ことわ)りの返事と(とも)に、(はかな)(つい)()ってしまった。 その予想(よそう)(がい)事態(じたい)に、それまで思春(ししゅん)()(あわ)期待(きたい)妄想(もうそう)波間(なみま)心地(ここち)よく(ただよ)っていた彼の(むね)は、()()微塵(みじん)に引き()かれて、(あわ)(くら)(よど)んだ水底(みなそこ)へと(ぼっ)してしまったのだった。 それが、今から1時間前の出来(でき)(ごと)。 (あー、神さま。 俺は今日、大好きだった女の子にフラれてしまいました… マジ、(つら)いっス…) そう心に(つぶや)いて、この炎天(えんてん)()に空を見上(みあ)げては、(しばら)くそのままの姿勢(しせい)保持(ほじ)し、次に()(いき)()きながら地面を見下(みおろ)しては、また(しばら)くそのままの姿勢を保持(ほじ)する。
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