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「──リュウジ」
一人の重厚な鎧に身を包んだ戦士が、肩越しにそう呼び掛けて俺を急かしてくる。
「......時間か。ダン、先鋒の兵の指揮を頼んだぞ」
「あぁ......一騎当千の名に懸けて誓おう」
俺はそれに頷いた後、右手を前に突きだした。
「【武装化(アームド)】」
そう呟くと指に嵌めていた指輪から、膨大な光が溢れだした。
「───行くぞ、《聖剣(エルキュロス)》」
やがて光が消え去ったとき、手中に現れた剣の名を口で挙げると、聖剣が俺の声に応えるように、光り輝いた。
「......」
───睨んだ先にあるのは、かつて俺が守ると誓った世界の中心である王国の王城。
「準備は良いですか? 勇者」
城を睨んでいると、魔族の長である魔王・ナディアが隣に並んでくる。
魔王が言ったその言葉に、俺は力強く頷いた。
「......大丈夫だ」
そうは言いながらも、王城の前にはおよそ十万を越える軍勢が俺らを待ち構えている。
どの敵も魔物ではなく、鎧と剣を装備した人間。
魔物の軍勢を一人で相手したことはあるが、人間の軍勢を相手取ったことなど一度たりともなかった。
それはそうだろう。その人間達の為に戦ってきたのだから。
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