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校門を飛び出し、全速力で走る。体育の授業でもこんなに本気で走ったことはないんじゃないかと思うくらい急いだ。
息が上がる。額から吹き出た汗がこめかみを通って流れ落ちて行く。
途中で足を止め、息を整えて汗を拭う。呼吸を整えて、手鏡で身だしなみをチェックする。
店の前で、空を見上げる真宙の姿を見つけた。
あの頃とは違う。身長も伸びて、雰囲気も大人っぽくなった。私の知らない真宙がそこにいる。
「遅くなってごめん」
声をかける。
振り向いた真宙と一緒に店に入ると、そこは昔より狭く感じた。でも何だろう?ほっとする。
懐かしいお菓子を手に取り会計を済ませる。
お婆さんの姿はなかった。代わりに男の人がいて、その人が笑うとお婆さんの笑顔を思い出した。もしかしたら息子さんなのかもしれないと思ったけど訊くことが出来なかった。
軒先のベンチに腰掛けた真宙の隣に少し距離を置いて座る。
「昔はさ、二人でよくきたよな。小遣い足りない時はこうやって、半分こしてさ」
棒が二本付いたアイスキャンディーを半分に割り、片方を渡してくれる。礼を言って受け取り、口に運ぶ。
冷たくて美味しい。懐かしい味。
まるで昔に戻ったみたいな錯覚を受けてしまう。
そんなはずないのに。
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