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「用事って何だったんだ?」
シャリシャリとアイスを食べる音がする。
真宙の横顔を見ながら冷たくなった唇をそこから離し、口を開く。
「私……告白されたんだ」
放課後、体育館の裏に呼ばれて「付き合って欲しい」と言われた。相手は同じクラスの男の子。
「そっか。良かったな」
笑顔を向けてくる真宙に苛立ち、残りのアイスを一気に平らげた。
全然良くない。
好意をもってくれたのは嬉しい。でも私には応えられないのだとすぐに分かった。だから申し訳ないなと思いながらも断った。
アイスの棒に歯を立てる。
泣きそう。頭の中が滅茶苦茶だ。
「俺さ、この店がなくなるって聞いた時、すぐにお前と一緒に行かなきゃって思ったんだ」
「……どうして?」
「あの頃は良かったなって。ずっと一緒だったろ?急に距離を置かれて、理由をずっと考えてたんだ。ここに来たら昔みたいに戻れるんじゃないかって思った」
おかしいだろ?と真宙がまた笑う。
先刻のとは違う寂しい笑顔。
「おかしくなんてない」
首を横に振る。
私も願っていたから。昔のように戻りたいと。自分が原因なのに。
嬉しかった。真宙がそんな風に思ってくれていたなんて。
「私、嬉しかったんだ。真宙が話しかけてくれて。一緒にって、誘ってくれて。私が悪いのに。……ごめんなさい」
両手で顔を覆うと、頭に柔らかい感触が。あやす様に髪を撫でられ、昔もこんな事があったなと思い出した。
乱暴な男の子達に苛められて泣いていた私の頭を撫でながら「大丈夫だ。俺が守ってやるから」と言ってくれた。
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