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「丸山んとこの娘、どうしてあんな怒ってたんだ」
「……ちょっとした行き違いで……戻ったら謝ります」
「あの一夕ってガキのせいか?」
ぎくりとした。とっさに表情を消すが、見抜かれていることを感じる。
「おいおい。女にかけちゃ大親分の木龍尋がまさか本当に男に惚れたのか?」
「っ、違います、誤解です」
「ほおお? に、しちゃ不自然だな。お前ら、全然目も合わせねえで」
「……」
「そのわりに互いにちょいちょい相手の顔見てんだよな。まったくむず痒いったらねえよ。青臭ぇ。なんだ。もうヤッたのか」
首を振った。必死過ぎるほどに。まずい。そうは思うものの、もうどうにもならない。
にっと副島が笑った。
「ほう? ホントだな? じゃああの兄ちゃん、生娘ってことだな。前も後ろもギヒヒ」
木龍の背筋がぞわりと寒くなる。
両性愛者を公言している副島だが、男の場合は若い相手に限られている。それも大人しく従順で、いたぶりがいのある少年や青年。
何度か、副島に酷い目に遭わされた男娼を見たことがある。身体中痣だらけ、傷だらけで、歯型らしきものまで付いていた時もあった。かなりの加虐嗜好らしく、一度彼の相手をした男娼が再びやってくることは皆無だった。
最悪なことに、一夕は副島の嗜好にぴたりとはまる。しかもあの整った顔立ちだ。彼にとっては舌舐めずりせんばかりの獲物であろう。
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