(五)

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「丸山んとこの娘、どうしてあんな怒ってたんだ」 「……ちょっとした行き違いで……戻ったら謝ります」 「あの一夕ってガキのせいか?」  ぎくりとした。とっさに表情を消すが、見抜かれていることを感じる。 「おいおい。女にかけちゃ大親分の木龍尋がまさか本当に男に惚れたのか?」 「っ、違います、誤解です」 「ほおお? に、しちゃ不自然だな。お前ら、全然目も合わせねえで」 「……」 「そのわりに互いにちょいちょい相手の顔見てんだよな。まったくむず痒いったらねえよ。青臭ぇ。なんだ。もうヤッたのか」  首を振った。必死過ぎるほどに。まずい。そうは思うものの、もうどうにもならない。  にっと副島が笑った。 「ほう? ホントだな? じゃああの兄ちゃん、生娘ってことだな。前も後ろもギヒヒ」  木龍の背筋がぞわりと寒くなる。  両性愛者を公言している副島だが、男の場合は若い相手に限られている。それも大人しく従順で、いたぶりがいのある少年や青年。  何度か、副島に酷い目に遭わされた男娼を見たことがある。身体中痣だらけ、傷だらけで、歯型らしきものまで付いていた時もあった。かなりの加虐嗜好らしく、一度彼の相手をした男娼が再びやってくることは皆無だった。  最悪なことに、一夕は副島の嗜好にぴたりとはまる。しかもあの整った顔立ちだ。彼にとっては舌舐めずりせんばかりの獲物であろう。

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