(2)微妙な親子関係

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「理恵さん、良いですから。住む場所と食事を提供して貰っているんですから、生活費を出すのは当然です」 「でも……」 「それじゃあ、勝手にやらせて貰います。ごちそうさまでした」 「ああ、勝手にしろ」  そこで手早く食べ終えた千尋は、空になった食器を抱えて立ち上がり、物言いたげな理恵の視線を受けながら台所に向かった。そこで食器を流しに入れた彼女は、そのまま廊下に抜けて二階の自室に向かう。 「ムカついて思わず啖呵切っちゃった手前、しっかり払うしか無いけど……」  高級住宅地の中にある、十分な間取りの家であるからしっかり個室が確保されているのであり、大学を卒業した以上は生活費を家に入れるのは当然だと認識していたものの、千尋は部屋に入るなり真っ先に通帳を確認して、重い溜め息を吐いた。 「今までに貯めておいた分だと、あんまり余裕は無いわね。開店時間が十三時から十八時で中途半端だし、午前中だけバイトを入れるって言うのも、移動時間や準備を考えると厳しいもの」  そんな愚痴っぽい呟きを漏らしたものの、千尋はすぐに腹を括った。 「やっぱりここはボランティアと割り切って、お母さんが退院したらすぐにバイトを再開しつつ、就活に本腰入れよう。うん、決めた」     
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