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千尋がそんな決意を呟いていた頃、階下のリビングでは理恵が夫にお茶を出しながら、控え目に苦言を呈していた。
「あなた。千尋さんに、あんな言い方をしなくても良いでしょう?」
「いつまでも学生気分が抜けずに、フラフラしている方が悪い」
「そうは言っても……。その尚子さんがやっている駄菓子屋って、あなたが離婚する時に渡した物でしょう?」
「お前には関係が無い事だ」
「ええ、関係は無いかもしれないけど、尚子さんと離婚した事を後悔しているんじゃない?」
「…………」
紋切り口調で切り捨てられ、内心で腹を立てた理恵が指摘すると、義継が無言で睨み付けてくる。しかし理恵は肩を竦めながら、面と向かって言い返した。
「別にその事を責めているわけでは無いし、勿論嫌みを言っているわけでもないのよ? だけど『離婚した分、千尋をしっかり育てないと』という意欲が空回りして、あなたは彼女に対して普段からかなり言動が厳しいし、要求する内容も無駄に高くなっていると思うわ」
「普通だ」
「良いじゃないの、尚子さんのお店を手伝う位。彼女はちゃんと、これからの事は自分なりに考えている筈で」
「もう休む」
「……おやすみなさい」
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