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「ねこさんがいたから、おばさんがおみせをあけてるとおもった」
少々残念そうに子供達が口にした内容を聞いて、千尋は首を傾げた。
「猫?」
「うん、くろいやつ。おみせがあるときは、いつもこのへんをフラフラしてるよ?」
「おばさんがかってるんじゃないの?」
「飼ってはいないのよね。入り浸ってはいるみたいだけど」
「ふぅん?」
「そっか。おねえさん、ラムネください」
「ぼくも!」
「はい、今出すからちょっと待ってね」
求めに応じて千尋が冷蔵庫からラムネの瓶を取り出し、栓を開けて子供達に手渡している間に、猫は気配を感じさせずにいつの間にか店内に戻っており、先程の椅子にまた収まっていた。代金を受け取ってレジに閉まってからその存在に気付いた千尋が、半ば呆れて凝視する。
「あ、飲み終わったら、瓶はそこのケースに入れてね?」
「だいじょうぶ!」
「ごちそうさまでした」
子供達が飲み終わりそうな事に気が付いて千尋が声をかけると、二人は慣れた様子で所定のケースに瓶を入れ、挨拶して公園に向かって行った。
(うん、小さい子って、純真で可愛いよね。お母さんの事も、心配してくれていたし。……心の中でだけど、悪態を吐いてごめんね)
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