(3)《よろづや》の頼もしいスタッフ?

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 二人の後姿を眺めながら反省した千尋だったが、店の奥に視線を戻すと、再び猫の姿が無くなっている事に気付いた。 「あれ? またあの猫、いつの間にかいなくなってる……。本当に、落ち着きの無い猫ね」  千尋が呆れ気味にそう呟いていると、それからものの五分もしないうちに、猫と共に少年三人組がやって来た。  「なぅ~」 「あ、戻って来た」  ゆっくり店内に足を進める猫を見つけて、千尋が思わず声を出すと、その猫に続いて男の子達が口々に言い合いながら入店してくる。 「お店、あいてるね」 「今日はやってるんだ」 「猫がいたし、やってるって言っただろ?」 「いらっしゃい」 (本当にこの猫が、お客の子供達を誘導しているの?)  あれが良い、これが良いと雑談しながら、手元の籠に小さなパッケージを入れている子供達から視線を外し、千尋は半信半疑で猫を凝視したが、相手は椅子の上で大きなあくびをしてから元通り丸まった。  それからぽつぽつと子供達が来店し始め、お菓子の他に水風船やシャボン玉のセット、組み立て式の紙飛行機などが一つ二つと売れていたが、何分か前に縄跳びを買って行った姉妹が再び来店して、千尋に声をかけてきた。  「お姉さん、はさみを貸して貰えますか?」 「え? 鋏?」     
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