(1)予想外の出会い

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(1)予想外の出会い

 十年前に両親が離婚して以来、千尋(ちひろ)は実の母親の尚子と顔を合わせるのは、何年かに一度の頻度だった。しかし小さな頃からの付き合いで、成人した今でも親しく交流している、母方の従姉妹の綾から連絡を貰った千尋は、母親の入院先に週末に顔を出した。 「千尋ちゃん、来てくれてありがとう」  病院の正面玄関前で待ち合わせていた綾が、安堵した表情で声をかけてきた為、千尋も苦笑しつつ並んで歩き出す。 「驚いたわよ。半年ぶりに綾ちゃんから連絡を貰ったと思ったら、こんな事になっていたとはね」 「本当は、変な心配をかけないように、退院するまで知らせるつもりは無かったのよ。でも叔母さんが、どうしてもお店が気になるって言うものだから。私かお母さんが、手伝えれば良かったんだけど……」  いかにも申し訳無さそうに口にする一つ年上の従姉に向かって、千尋は首を振った。 「そんな事、気にしなくて良いわよ。顕子伯母さんも綾ちゃんも、仕事があるんだし。古くて小さい駄菓子屋だから、いっその事この機会に閉めれば良いのに、お母さんの我が儘じゃない。どうして好き好んで、あんな大して稼ぎにもならない店をやっているんだか」 「千尋ちゃん……」     
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