(4)面倒くさい父親

1/3
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ

(4)面倒くさい父親

 その日の夕食時の話題は、もっぱらクロ一色となった。  仕事で帰宅が遅くなる義継を除いた田崎家全員が顔を揃えた席で、理恵から「お店は今日からだったけど、どうだった?」と心配そうに尋ねられれば素っ気なく答えるわけにもいかず、千尋は開店からのあれこれを順序良く語って聞かせた。 「それで……、今まで言った他にも、ゴミ袋を切らしていればそこのロッカーを叩くし、無くなった商品在庫の前で鎮座して鳴いているし。細かい所で店を閉めるまで、色々助けられたのよ」  そう話を締めくくると、この間興味津々で姉の話に聞き入っていた聡美と健人は、すっかり感心した風情で感想を述べた。 「その猫、すごいね」 「あたまいいね~」 「うん、まあそれは認めるし、釈然としない所はあるけど……。素直に助かったと思っておくわ。本当にもの凄い確率での、偶然だったのかもしれないけど」 「でもお店の事を知り尽くしているスタッフが居ると思えば、随分気が楽よね。営業までやってくれているなんて完璧よ」 「本当ですよね。それに経費はかからないし」  思わず理恵も笑いながら会話に加わると、千尋も苦笑で返す。     
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!