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(2)微妙な親子関係
その日は週末の為、普段帰宅が遅い父親の義継も顔を揃えての夕食となったが、元より寡黙な彼が話題の中心になるわけは無く、専ら後妻である理恵とその子供達の間で会話が弾んでいた。
(一応、先に話をしておかないと、後で色々揉めるかもしれないし、やっぱり言っておくか)
この和やかな空気に水を差しかねないとは思ったものの、父親と義母個別に話すのは二度手間だと考えた千尋は、思い切って義継に声をかけた。
「お父さん、話があるんだけど」
「何だ?」
「来週からボランティアをするつもりなの」
千尋がそう口にした瞬間、義継が箸の動きを止めて娘を軽く睨み付ける。
「ボランティアだと? 就職活動中に、随分と余裕だな」
「あなた。そんな言い方は」
「お母さんが交通事故に巻き込まれて、あと二ヶ月は退院できないのよ。だからその間、お店を開けてくれないかと頼まれたの」
「…………」
「え?」
慌てて取りなそうとした理恵は彼女の台詞に驚き、義継は無言で眉根を寄せた。そして千尋と睨み合う中、微妙な沈黙が漂ったが、それを甲高い声が消し去る。
「お姉ちゃんのお母さん?」
「おねえちゃん、どんなおみせ?」
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