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どの世界にも属さず、どの世界にも関わらず、
そうして永遠の刻を過ごす魔術師がいた。
何時ものようにコーヒーを飲み、
黒蛇のノワールを撫でて、腕に巻きつくのを待つ。
そして食卓に着くと、杖を一振りし、
現れた朝食を無言で食べる。
野菜をメインにした洋食……
フォークとスプーンを使って、
器用にサラダを掴んで口へと運び、
スープを飲み干す。
そうして暫く、
ゆっくりとした時間を楽しんでいたが、
机の上に置かれた封筒に目が行った。
「ダンブルドアか。珍しいな」
唯一と言って良いほどの
外界との繋がりである人物からの手紙に、
薄い笑みが漏れる。
闇の帝王の時代に帝王打倒へ協力しなかった故に、
多くの人々からの信頼を失った。
しかしダンブルドアだけは、
変わらず手紙を送り続け、
ノアから助言だけ受け取るという形で、
秘密裏に関わっていたのだ。
そのダンブルドアからの便り。
嬉しく無いわけがない。
急いでペーパーナイフを取り出して、
手紙を開けた。
そしてそれは、
これから長きに渡って綴られる物語の歯車が、
ゆっくりと動き出した瞬間だった。
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