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元々舟木くんは優しくて正義感の強い人だ。でもまさか今になっていじめを庇うなんて驚いた。今まで舟木くんが山田さんのために何かをするなんてことはなかったのに。
山田さんを助ける舟木くんはかっこいい。さっきのやり取りを見て山田さんに嫉妬すると同時に、舟木くんに対する好感度が更に上がった。
舟木くんに気にかけてもらえる山田さんが羨ましい、なんてこの状況で思う私は酷い人かもしれない。
もし今山田さんの教科書を拾うのを手伝ったのが舟木くんじゃなく他の男子なら羨ましいなんて思わなかったのだから。
私は一年のときから舟木くんが好きだった。
同じ選択授業を受けたり、わざと同じ時間になるように下校して自転車で一緒に帰ったことだってあった。
少しずつ話すようになって、冗談も言い合える仲になった。
あともう一歩だ。
私は舟木くんと付き合いたかった。
体育の授業の前にトイレに寄った。
壁を曲がると流しの前で立ち尽くす制服姿の山田さんがいた。
私がトイレに来ても、こちらを見ることもなくただ立っている。
これからすぐ体育の授業だというのにまだジャージに着替えないなんて見学かな?
一瞬考えたけれど彼女に何も話しかけることなく、後ろを通ってトイレの個室に入った。
個室から出ると山田さんがまだ流しの前に立って何かを絞っていた。
嫌な予感がしながらも手を洗うために近づいた。
流しに立って驚いた。
山田さんが絞っていたものはジャージだった。流しの中にジャージの上下が水浸しに置かれ、山田さんは袖だけを絞っていた。
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