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舟木くんはクラスでも目立つグループにいる人気者。ルックスが良く友達も多くて、もちろん女子にもモテる彼が山田さんの手助けをするなんて予想外だ。クラスの誰もが二人に注目していた。
「これで全部?」
「は、はい……」
舟木くんの問いかけに山田さんは床を見渡して私物を全部拾ったことを確認した。
「ありがとう……ございます……」
「どういたしまして」
舟木くんは山田さんのお礼の言葉に微笑んだ。私はそんな二人のやり取りに胸がざわついた。山田さんを標的にしている女子たちは目を真ん丸に見開き口を半開きにしている。舟木くんと山田さんを見た私も彼女たち同様、舟木くんから笑顔を向けられる山田さんにほんの少しイラつきもした。
二人が立ち上がったそのとき担任が教室に入ってきた。何事もなかったかのように二人が席に座り、いつものように授業が始まった。
けれどクラスメートは担任に気づかれないように目配せしたり、山田さんを睨む女子もいた。
舟木くんが山田さんに手を貸したことで、益々山田さんを気に入らないと思う女子が増えてしまったことだろう。それを舟木くんも山田さんもどの程度自覚しているのだろう。
抑揚のない担任の声を聞きながら、私は先程の舟木くんの行動を思い返した。
山田さんを庇った者は男女関係なく制裁を受ける。けれどそれが舟木くんなら雰囲気がかなり変わってくる。彼なら巻き込まれていじめられるどころか、弱いものを庇うヒーローになってしまえる。山田さんをいじめる空気を変えることができるのだ。
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