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わたしは微かに頷き、目を閉じた。でももう、どうでもいいや。全部終わったんだ。多分動画とか写真も撮られなかった。これをばら撒かれたくなければとかも言われてない。だから、もうこれ以上この人たちと顔を合わせる必要はない。
忘れよう。酷い目に遭ったけど、時間が経てばあれは仕方なかったんだ、と割り切れるようになるかもしれない。
わたしの家の前に着いた。林立する高層マンションの一角。オートロックの扉の前に立ち、彼らから身体を離した。暗証番号を誰にも知られるな、とリュウに口を酸っぱくして言われてる。本人も絶対に知ろうとしない。送ってくれた時も明後日の方向に目を向けて視界に入らないようにしてるくらい。
この人たちがそこまでデリケートとは思えないので、そこで別れを告げるつもりで振り向いた。手許なんか覗き込まれたらことだし。
「あの、それじゃ。…わたしはここで」
「あ、眞名実ちゃん。忘れるとこだった。連絡先。…いいよね?」
高松くんが当たり前のようにスマホを平然と取り出し、わたしの顔を悪びれずまっすぐ見る。思わず口許が微かに歪んだ。…えー。
何で?
よくはない。…気が、するんです。けど。
「あ、そうだな。俺も。…LINEでいいかな」
「眞名実、俺とも。グループ作っとくよ」
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