肆:刻まれし罪

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希望の光を求めて見た赤い瞳に、百合子の反応を面白がるような色合いが浮かぶ。 「つまり──汝はこの“陽ノ元”で、黒い“花嫁”として生きることを選ぶ、ということとなる」 「分かった。それでいい」 それで、兄の命が救えるというのなら──。 百合子はそう思い、うなずいた。 「……潔いおなごよのう……」 青年の口から、そんなつぶやきがもれた。 「何?」 百合子の耳には青年の言葉はよく聞き取れず、眉をひそめたが返答はなかった。 代わりに、赤い瞳の眼光が百合子を捕らえた。 凛とした声で放たれる、言霊の誓約と共に。 「汝の過去である『工藤小百合』という存在を、いまこの瞬間、我ヒノヤギハヤヲの名において、抹消することをここに誓おう。 汝はこれより先、ただの『百合子』として“下総ノ国”の黒い“神獣”の“花嫁”となるがよい」 コツン、と。 ふたたび床を杖が突くような音を最後に、百合子の意識は遠のいていった……。
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