肆:刻まれし罪

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      《三》 目を覚ますと、そこはまた、暗がりのなかだった。 「……待て。いま、灯りをつける」 起き上がり、辺りを見回した百合子の視界の端で、声と共に何かが動く。 ぽっ……と、灯された火に浮かびあがるのは、ざんばら髪の少年の姿。 そして、見覚えのある室内──百合子、いや『小百合』が“召喚”された三畳ほどの板の間。 格子戸の向こうは、闇夜。まさしく新月の晩だった。 「……私は、なぜここにいる?」 眉をひそめ、百合子は黒い“神獣”の“化身”を見つめる。 少年は、百合子の視線から逃れるように、闇向こうに目を向けた。 「今宵は、見ての通りの新月──おぬしの願いが、ようやく叶うのじゃ。 ……待たせて、すまなかったのう」 言って立ち上がったコクコは、微笑みを浮かべ百合子の側に近寄ってきた。 その手には、金色に輝く稲穂がある。 「この“神宝具(じんぽうぐ)”が」 百合子に手渡しながら、少年が告げた。 「おぬしが想う『時と空間』に、連れていってくれるはずじゃ。 これで、おぬしは元の世界に、帰れる」
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