肆:刻まれし罪

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重ねられた指に、ぎゅっと力が込められる。 「百合。短い間であったが、おぬしがわしの“花嫁”でいてくれて、良か──」 「勝手なことを言うなっ……!」 コクコの言葉をさえぎって、百合子はその手を思いきり払いのける。 拍子に、金色の稲穂が宙を舞い、きらきらとした光を撒き散らしたのち──消えた。 その様に驚き目をみはったコクコの黒い道着の胸ぐらを、百合子はぐいとつかみ上げる。 「お前はっ……私をなんだと思っている!」 「ゆ、百合? いったい、何を怒っておるのだ……?」 百合子の怒りをまるで理解できないでいるコクコは、なすがまま百合子を見上げあっけにとられている。 「私の都合も訊かず、ここに()んで“花嫁”にしておきながら、今夜は新月だから私を元の世界に還してやるだと!? ふざけるのも大概にしろ!」 ぱちぱちと目を(しばたた)かせていたコクコは、そこでようやく合点がいった表情をした。 「……百合の怒りは最もなことじゃな。おぬしの気が治まらぬのも道理。 わしを殴るなり蹴るなり、好きにするが良い」 「……っ!」
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