肆:刻まれし罪

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至近距離で見つめ合う状況と、いましがたの自身の発言内容を猛省するかのような、コクコのあわて振り。 冷静になったはずの百合子の胸のうちで、ふたたび荒波が立つ。 「お前という奴はっ……!」 気づくと百合子は、そんなコクコを力づくで板の間に引き倒していた。 「──……大事ないか、百合?」 わずかなのち、コクコが気遣わしげに言った。 百合子が感じた衝撃が思ったよりも少なく済んだのは、下敷きになったコクコがうまく受け身をとってくれていたからで。 「私のことより自分を心配しろ。 ……無理やり倒してきた相手を、なぜ気遣うのだ」 「そうじゃのう……百合だからかもしれぬな」 ムッとして見下ろした先の少年は、困ったような笑みを浮かべる。 その笑みが、百合子のなかにあった強い感情と決意の引き金を、引く。 「わっ……」 コクコの短い叫びをよそに、百合子は彼の道着のえり元を開き、現れた鎖骨下に唇を寄せた。 「ゆゆゆ百合っ……!」 悲鳴のような呼び声と共に熱くなる肌に、吸い付く。 そうして百合子は、自身の想いを刻みつけた。
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