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8月31日。
消毒液のにおい、落ち着くというか、ソワソワするというか、この匂いは、いろんな感情を思い出させる。
白い部屋に、白衣を着た、白髪の増えた主治医。白のイメージの強いこの場所。
静かな部屋に、キーボードを叩く音が、カタカタと鳴り出した。
「藤本先生、早く帰りたいんだけど」
「美緒ちゃん、もう少し待っててくれるかな??」
退屈そうにしていると、優しく微笑んだ藤本は、ポケットから飴を取りだし、渡してくる。
小さなころから私のことを知っている藤本は、いつまでも私のことを子ども扱いだ。
ノックの音が聞こえて、振り返ると、両親が診察室に入ってきた。
思わず眉間に皺が寄ってしまったのは、両親が来るなんて、聞かされてなかったからだ。
「藤本先生、こんなの聞いてないんですけど……」
「あぁ、美緒ちゃんには伝え忘れていたから」
と涼しい顔で、藤本は答える。
「今日は、美緒ちゃんの15歳の誕生日だよね。それで、来てもらったんだ」
定期検診なんて、いつも1人で来ていたため、両親が来るのは珍しかった。
「わざわざ、誕生日だからって呼ばなくていいのに。どうせ家で会えるんだから……」
と呆れてる私を見て、
「今日は、美緒ちゃんの病気のことについて、話しておきたいことがあってね」
と、藤本は両親を椅子に座るように促し、
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