俺と太陽

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俺と太陽

久しぶりに外へ出た。 久しぶりと言ってもどれくらい久しぶりかわからないくらい久しぶりだ。今日、外出したのは気分的に外に出てみようと思ったから出てみた。今までずっと家の中で、日陰で、ほそぼそと暮らしていたかって理由は簡単だ。 俺は眩しいくらいキラキラ輝くこの世界が苦手だからだ。 子どもの楽しそうな笑い声も、主婦の井戸端会議も、世界の喧騒すらも煩く落ち着かない。太陽の真っ直ぐで暖かな日差しは、全てを包み込んでいるというよりは悪も黒も陰も全てを曝け出させようとしているようにすら思えてならない。 『北風と太陽』で、北風が悪、太陽が正義という流れで旅人のコートを脱がすが、俺にとってはまだ北風の方が好感を持てる。太陽の光があるから、暑くなって体中から汗が噴き出て、澄まして歩いていても、疲労感も嫌悪感も全てが滲み出てしまう。悔しいほどに、太陽は俺の出さなくてもいいモノを引っ張り出す。 汗をかくことはいいこと、太陽の光を浴びるのは健康の為。 絶対?だ。 俺の頬から滴り落ちるみっともない汗は、久しぶりに外出した俺の身体も服も汚していく。綺麗なまま帰宅したかったのに。やっぱり外に出なきゃよかった。 後悔はもう昔にしているが、俺はもう1つの目的を果たさなければならない。 日頃、運動という運動もしていない俺にとってただの「散歩」とも言える歩きも、すぐに疲労感の募る運動になる。日向が苦手、いや嫌いな俺は誰とも目を合わせることもしたくなかったので、ひたすら足元を見て早く用事を済ますことだけに集中した。「競歩」という種目があるが、俺は今競歩をしているくらい速く歩きたいと気持ちは焦るが身体は言うことを聞かず、太陽の光によってますます体力が奪われていくのみだ。 「あ、お兄ちゃん!…ちょっと、お兄ちゃんってば!」
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